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20年越しの手紙

ベルリンに住み始めてから、いつか連絡しなくてはと思っていた人がいる。その人は、壁が崩れる前後、昭和と平成の狭間でベルリンを訪れていた。好奇心旺盛なキラキラと光る目で、東ベルリンの街とそこに住む人たちの素朴で力強い魅力を、まだパスポートさえ持っていなかった高校生の私に語ってくれた。 その人とは、高校1年のクラス担任。教師という人種を毛嫌いしていた私は、初日からその担任に対しても、「騙されないぞ」という反骨心を丸出しにしていた。でも彼は、どういう訳か、そんな尖った10代の私を買い被った。「自分は平凡な人間だ」と常々思っていた私の背中を、ほんの時々、でもタイミングよく押してくれた。実力以上のことを試す勇気をもらった。いつか、海の向こうへ行きいたいという夢が、もしかしたら実現できるかもしれないと思い始めたのもこの頃だったと思う。日本を飛び出した今の自分があるのは、ある意味、この先生との出会いがあったからだと言える。繰り返すけれど、私は教師という人種がお世辞にも好きではない。でも、この先生は「恩師」だと呼べる。そして、多感な時期に出会い、影響を与えてくれた大人の一人だ。 私にとってこんなに重要な人なのに、なかなか書けなかった手紙は、ようやく数年前に下書きが済んだものの、そこから少なくとも5年間は、机の隅で他の書類に埋もれながら清書される日を待っていた。不幸中の幸いか、コロナがもたらしたたくさんの時間に後押しされて、今年ようやくポストに投函された。高校の名簿にある住所を頼りに、無事届くことを祈って…。 Since I started living in Berlin, I have had a person in mind, whom I though I should write a letter to. This person had visited Berlin before and after the fall of the wall. With his wide eyes of curiosity, he […]

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