All posts filed under “Bucharest

やさしい人々

動くたびに視線がピタッと付いてくる。明らかな訪問者である、私の一挙手一投足を見つめる目。険しい表情が監視しているのだろうと、その視線の持ち主にそっと目をやると、そこには歩き始めた子を背後からそっと見守る親のような眼差しと、柔らかい笑顔があった。 ブカレストでは、たくさんの優しい笑顔に癒された。温かいお母さんがブカレストなら、ベルリンはちっとも褒めない硬派なオヤジ。愛がない訳じゃないけど、不器用。ちょっとひねくれてもいる。ベルリンのツンデレも惹かれるけど、褒められて伸びるタイプの私には、ブカレスト的な親がほっとする。 Every time I moved, a silent stare followed me very closely. Eyes stared at every move I, the obvious visitor, made. I thought there must be a serious face checking on me. But when I moved my eyes towards the gaze very slowly, […]

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小さな魔法

*Please scroll down for the English version. 小さな店先のショーウィンドウが好きだ。一枚のガラス板を挟んで、外と内の2つの空間がシンクロする。 ヨーロッパ、特に東欧の街に行くと、日本では減ってしまった個人商店がまだ軒を連ねていることが多い。その独特の装飾やデザインのショーウィンドウは、物珍しいというだけでなく、その店のセンスが光っていて目をひきつけられる。ウィンドウの外側から透けて見える中の世界は、異国情緒も相まって好奇心が掻き立てられる。 ブカレストで出会ったこのショーウィンドウは、カラフルな半透明のシールのようなものが窓に貼られていて、通りの反対側が鏡のように映り込んでいた。裏と表の風景が幾層にも重なりあって、ちょっと幻想的でもあった。 I love shopfront, especially the ones of privately owned shop. It is fascinating to see that two worlds, inside and outside, are synchronized with a glass plate separating them. Comparing to Japan, there are still […]

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街の色

2000年当時、私が住んでいたベルリン旧東地区は、建物のほとんどが灰色だった。通りを歩くと、自分だけが(通行人が少なかったこともあるが)モノクロ写真の中で色付けされた被写体のような、通りから自分が浮き上がっているような奇妙な感覚を体験したものだ。 そんな経験があったからか、私の頭の中ではこう決まっていた。ブカレストはグレーの街、私が住み始めた頃の旧東ベルリンのような、色のない街と。でも実際は、青くて高い空と控えめながら調和のとれた色がちりばめられた、可愛らしい街だった。 色も記憶を呼び起こす。ブカレストの色はどこか懐かしく、自分の子供時代を思い出す優しい色が多かった気がする。そこに、旧共産国の重厚な建築が重なり合って、なんとも刺激的な景色だった。 When I started living in Berlin in 2000, many buildings in the former East Berlin were gray and unrefurbished. When walking down the street, you felt like you were a few (or sometimes the only) “hand-coloured-object” in a monochrome photograph. No exaggeration. […]

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美しい人

ブカレスト市街の路線バスで、美しい女性に出会った。この人もきっと、ルーマニアの激動の歴史を体験したのだろうと勝手に想像しながら、その清楚な佇まいに見入っていた。普段なら、こっそり写真に収めて、、、と思うところだが、思い切って声をかけた。笑顔でカメラに向かう彼女、慌ててシャッターを切る私。 偶然、私たちは同じ停留所で降りた。彼女は、しわくちゃの笑顔で私の手をぎゅっーと握り、感極まって、力いっぱい私の肩を抱き寄せた。その状態で、私たちはしばらく通りを一緒に歩いた。言葉はまったく通じない。 言葉がわからなくても通じ合える時がある。できる限りのすべてを使って、「自分をさらけ出すコミュニケーション方法」が、異国の土地にいる楽しさが、私が旅を大好きな理由だった。でも、ドイツ生活が長くなり、通じないことが不便で不都合な場合が増えて、この感覚をすっかり忘れていたなぁ…。そんなことを一瞬の間に頭に巡らせながら、とても嬉しそうにルーマニア語で話しかけてくる彼女の顔をじっと見ていた。 I met a beautiful lady In a local bus in Bucharest. While I was taken by her elegant and sweet aura, I imagined her life which surely went through the turbulent history of Romania, of course, without knowing her personally. I often […]

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Meeting point

何かいいことありそうな、目印。いつもキョロキョロして歩いている私は、こんなサインを見つけると、ワクワクしてくぎ付けになる。 電柱のないベルリンでは、信号機の柱が掲示板として重宝されている。「部屋探してます」「ギターレッスンします」「猫がいなくなりました」。そんなメッセージボードを見ながら暮らしているので、ブカレストの街でこのマークを見て、何かのお知らせなのかと勘繰った。 I felt like this sign is telling me something good will happen right here. I am always looking around when I walk, to see if there is any “sign”, anyone interesting or anything that I should pay attention to (otherwise no one would). […]

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嬉しい人々

工事現場で見かけたこの男衆。最初はやや鋭い視線で私を見ていたが、写真を撮りたいと話しかけると笑顔になり、ネクタイを締め直さんとばかりにちょっとかしこまった風にカメラに向かった。「俺、もう日本で有名人だね」と、片言の英語で言うと、クシャと笑った。 ブカレストの人は優しかった。東欧の冷たいイメージが先入観という箱にすっぽりはまっていたので、一見険しく見える彼らの表情が、素朴な笑顔でくずれるのを見て正直拍子抜けした。この旅では、久しぶりに意識的に人を撮った。 旅が好きだ。知らないことを、知らないと言えて、知りたいことを探求できるから。生活することで得る知識や経験も素敵だけど、未知の文化に飛び込む感覚は、格別に刺激的だ。 These gentlemen I saw at a construction site were looking rough at first, but as soon as I talked to them asking that I wanted to take a picture, they smiled very gently. As if they were trying to fix their tie […]

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