gentlemen’s circle

床屋には、流行り廃れに左右されない独特な佇まいがある。この空気感は、国が違っても共通しているように感じる。そのスタイルは、正直言うとおしゃれではないのだけれど、そのオフ感が一周まわってクールというか。ブレない感じが、とても惹かれる。男の美学を追求する場所、客も店員も真剣勝負、ガラス越しに見えるその微妙な緊張感。私が女ばかりの家庭に育ったので、未知の世界への興味がそう思わせるのかもしれないが、床屋には理屈では説明できない魅力がある。 NYのウェストブロードウェイ近くで出くわしたこの床屋は、何が特別なのかと聞かれると、ネオンのハサミが可愛いこと以外、正直これといった特徴はない。でも、どこの国にあっても「どこにでもある一軒」になるところが床屋の魅力だと思う。みんな似ている、でも、微妙に違う。変わらない時間が、ずーっと流れている感じが、たまらなく渋くて好きだ。 A barbershop has a distinct style which is never affected by changes in fashion. Its aesthetics are consistent regardless of the country in which it is located. The shop design is not cool, I would say, but its off-ness is too off, and […]

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where is your home?

普段何気なく目にしているものが、実際はどこから来たのかを知ると、親近感が湧く。ベルリンのたまに行くカフェのバーカウンターに、この「TABAC」のサインがかかっているのは長年目にして来たけれど、初めて訪れたパリの夜道で遭遇した時、あ、「お家はここだったのね」と妙に納得した。それもそのはず、件のカフェはギャルソンというフレンチカフェだから。 「TABAC」のサインはフランスのもの。知っていれば、そこまで驚かない。でも、世の中にはこういう点と点が繋がって納得する瞬間がたくさんある。外国に行かずとも、外国のものがたくさん集まっている日本で暮らしていると、旅先でふとした瞬間にこういう発見をすることが少なくない。知らなかったの?と言われたらそれまでだけれど、「本家」を知ることは、視界が開ける感覚と似ていて気持ちがいい。 When you learn the origin of the thing, which you have seen so many times nearly unconsciously, you kind of feel closer to it. I have seen this “TABAC” sign at the bar counter in a berlin café where I go sometimes and […]

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電線

たまに電線が恋しくなる。言ってみれば、ただの「棒と線」なのだけれど、そこに繋がっている家や人を空想するのが楽しい。電線と郷土愛を結びつけるのは無理がある。でも、間違いなくノスタルジーを感じる原風景の一つと言っていい。 ドイツには電線がない。少なくとも都心の電線は地下に潜っていて、街の景観はすっきりしている。言い換えれば、殺風景だ。片付いた部屋は気持ちいいけど、片付きすぎた部屋が疲れるのと同じで、すっきりしたドイツの景観、さらに言えばそのシステムには時々疲れる。 だから、イギリスでこの電線を目撃した時は、かなり盛り上がった。この放射状のへんてこな構造には、「人間らしさ」という壮大なイメージさえ感じてしまった。いつもきちっとしてなきゃ、と思わされている自分の心が、「これでもいいんだ」とほっとした。 Sometimes, I miss a power pole. It’s just “a stick and a line” but I like to imagine where it leads to, people and their life connected to the end of the line. To associate an electric line with my love for […]

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Berlin AD No.1

ドイツの広告は、ショックを受けたり、恐がるかもしれない人のセーフガードを付ける忖度をしない。広告はある意味「大人仕様」で、そのインパクトを広告効果へと逆手に取ってるな、と思うときもある。このポスターの好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、とにかく目をひきつけられるし、こんなに尖がったデザインをポスターに採用するベルリンって、かっこいいなと思う。(ちなみに、サイバー攻撃の危険を訴える内容) コミュニケーションがダイレクトなドイツは、さりげなさや控えめな表現を美徳としない。オブラートのかかっていない直球さは時にショッキングで、最初はとてもびっくりしたけれど、実際、世の中というものは汚いものも恐いものも、きれいでかわいいものと同じくらい溢れている。こっちの子供が時々に大人びて見える理由は、「大人仕様」の環境から色々と学んでいるからかもしれない。 German Ads have no safeguard for a potential audience who might be scared or shocked by their expression. It is made, in a sense, “for grownups” and I sometimes think, they maybe use that impact as an effect of the Ads. Whether you […]

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恐怖の鍵や

ドイツには、通りに突き出したタイプの看板が少ない。「看板文化」から来た身には物足りないけれど、たまに遭遇するものには秀作が多い。 平和で静かなチューリッヒの旧市街で遭遇した、この看板。「angst(アングスト)」とはドイツ語で「恐れ・不安」などを意味するのだが、驚きのあまり、しばらく看板を見上げたまま佇んでしまった。鍵やの名前に「angst」とつけた意図って、なんだろう。シャレか?ここで鍵を作れば、恐いものなし、という願掛けか?どっちにしても、斬新。 There are not so many hanging signs in Germany. I find it’s quite boring since I grew up in a country where shop signs was valued. However, if you encountered one the design quality is often excellent. In the peaceful and quiet old […]

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TECHNOPARK

この建物が目に入った瞬間、クラフトワーク、YMO、ジョイ・ディビジョンの音楽が聴こえた。 ほぼ予算のみで選んだチューリッヒの民泊先は、シフバウ(造船の意味)という工業再開発地区で、バウハウス好きには心地よいランドスケープが広がる。工業地帯は、ずるいほどに潔い存在感があって好きだ。少しすさんだ感じの哀愁も心惹かれる理由かもしれない。 Kraftwerk, YMO or even Joy Division were playing in my head when I stood in front of this building. An accommodation in Zurich I chose almost purely based on a budget was located in an old industrial area called Schiffbau (meaning shipbuilding) and […]

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BER-OSL

小学生の頃の私は、この景色を見るとは夢にも思っていなかった。ここはオスロ、クリスマスの翌日。 SNSのお陰で小学校時代の友人と30年ぶりに繋がった。でも正直、自分の人生で小学校がことさら思い出深いわけではなく、この先の展開にあまり期待はしていなかった。ただ、実際に会ってみると、校庭で一緒に遊んでいた時と同じ、飾らない会話が楽しかった。そうだ、あの頃の私たちには肩書もキャリアもなく、同じことに笑えるか、同じことが好きか、どんな食べ物が苦手か。そんなことが一番先頭にあった気がする。ただシンプルに毎日を生きていた。 その証拠に、一番印象に残っている彼の思い出と言えば、生のニンジンを丸ごと一本食べて、親から500円のお小遣いをもらったことだもの。おまけに、私たちはこの話に大熱狂した。実にシンプルだ。ニンジンからオスロへ…誰が想像しただろう。 When I was ten, I never imagined that I would see this scenery. This picture was taken from a friend’s house in Oslo on the day after Christmas. Thanks to SNS, I re-encountered an old 4th grade classmate after 30 long years. […]

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街の色

2000年当時、私が住んでいたベルリン旧東地区は、建物のほとんどが灰色だった。通りを歩くと、自分だけが(通行人が少なかったこともあるが)モノクロ写真の中で色付けされた被写体のような、通りから自分が浮き上がっているような奇妙な感覚を体験したものだ。 そんな経験があったからか、私の頭の中ではこう決まっていた。ブカレストはグレーの街、私が住み始めた頃の旧東ベルリンのような、色のない街と。でも実際は、青くて高い空と控えめながら調和のとれた色がちりばめられた、可愛らしい街だった。 色も記憶を呼び起こす。ブカレストの色はどこか懐かしく、自分の子供時代を思い出す優しい色が多かった気がする。そこに、旧共産国の重厚な建築が重なり合って、なんとも刺激的な景色だった。 When I started living in Berlin in 2000, many buildings in the former East Berlin were gray and unrefurbished. When walking down the street, you felt like you were a few (or sometimes the only) “hand-coloured-object” in a monochrome photograph. No exaggeration. […]

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True Value

このサインが作られた頃は、「本当の価値」というものがもっと分かりやすかった時代だったのではと想像する。多様性の大切さが声だかに叫ばれる今の時代には、こんなサインは少しおこがましくてつけられない。 ただ、自信や確信というものは、根拠がなくても胸をはって言い切ってしまえば勝手に説得力がくっついてくる時がある。このサインには、そんな「言い切りパワー」が備わっている。それがアメリカの魅力というか武器でもあるのかなと思う。 When this sign was made, “true value” might have meant simpler. In the modern times when people calling for diversity, you have to have a gimmick or do it in the right way to make it acceptable. However, a statement with confidence may […]

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美しい人

ブカレスト市街の路線バスで、美しい女性に出会った。この人もきっと、ルーマニアの激動の歴史を体験したのだろうと勝手に想像しながら、その清楚な佇まいに見入っていた。普段なら、こっそり写真に収めて、、、と思うところだが、思い切って声をかけた。笑顔でカメラに向かう彼女、慌ててシャッターを切る私。 偶然、私たちは同じ停留所で降りた。彼女は、しわくちゃの笑顔で私の手をぎゅっーと握り、感極まって、力いっぱい私の肩を抱き寄せた。その状態で、私たちはしばらく通りを一緒に歩いた。言葉はまったく通じない。 言葉がわからなくても通じ合える時がある。できる限りのすべてを使って、「自分をさらけ出すコミュニケーション方法」が、異国の土地にいる楽しさが、私が旅を大好きな理由だった。でも、ドイツ生活が長くなり、通じないことが不便で不都合な場合が増えて、この感覚をすっかり忘れていたなぁ…。そんなことを一瞬の間に頭に巡らせながら、とても嬉しそうにルーマニア語で話しかけてくる彼女の顔をじっと見ていた。 I met a beautiful lady In a local bus in Bucharest. While I was taken by her elegant and sweet aura, I imagined her life which surely went through the turbulent history of Romania, of course, without knowing her personally. I often […]

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Meeting point

何かいいことありそうな、目印。いつもキョロキョロして歩いている私は、こんなサインを見つけると、ワクワクしてくぎ付けになる。 電柱のないベルリンでは、信号機の柱が掲示板として重宝されている。「部屋探してます」「ギターレッスンします」「猫がいなくなりました」。そんなメッセージボードを見ながら暮らしているので、ブカレストの街でこのマークを見て、何かのお知らせなのかと勘繰った。 I felt like this sign is telling me something good will happen right here. I am always looking around when I walk, to see if there is any “sign”, anyone interesting or anything that I should pay attention to (otherwise no one would). […]

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Viel Glück

Good luck を意味するドイツ語。Viel glück (たくさんのラッキーを)!これと似た言葉に、viel spass(たくさんの楽しさを = have fun)や vielen dank(たくさんのありがとう = thank you)なんかがある。 日本語と比べると、ドイツ語というのは驚くほど直球で飾りのない言語だと思う。時として(人によってはかなり頻繁に)、ぶっきらぼうに聞こえるその語感を、私はいつもマイナスの特徴と捉えている。でも、この言葉には、直球さゆえに懐にストンと入ってくる、「不器用な昭和の親父」みたいな素朴な良さを感じる。相当個人的な感覚かもしれないが。 語感のうんちくはさておいても、このマスキングテープをニヤニヤして張った人、このマスキングテープをニヤニヤして見た人。いつも歩いている普通の道なのに、私までニヤニヤ。飾りのないシンプルなドイツのメッセージ・オン・ザ・ストリート。 Viel Glück, viel spass and vielen dank. When they are translated literally, it will be “a lot of luck”, “a lot of fun” and “many thanks”. Sometimes, I have […]

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嬉しい人々

工事現場で見かけたこの男衆。最初はやや鋭い視線で私を見ていたが、写真を撮りたいと話しかけると笑顔になり、ネクタイを締め直さんとばかりにちょっとかしこまった風にカメラに向かった。「俺、もう日本で有名人だね」と、片言の英語で言うと、クシャと笑った。 ブカレストの人は優しかった。東欧の冷たいイメージが先入観という箱にすっぽりはまっていたので、一見険しく見える彼らの表情が、素朴な笑顔でくずれるのを見て正直拍子抜けした。この旅では、久しぶりに意識的に人を撮った。 旅が好きだ。知らないことを、知らないと言えて、知りたいことを探求できるから。生活することで得る知識や経験も素敵だけど、未知の文化に飛び込む感覚は、格別に刺激的だ。 These gentlemen I saw at a construction site were looking rough at first, but as soon as I talked to them asking that I wanted to take a picture, they smiled very gently. As if they were trying to fix their tie […]

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スイスは電気を消さない

倹約上等のドイツ文化が染みつき、薄暗いベルリンの生活が長すぎてしまったからか、スイス人の電気の使い方がいやに気になった。 半屋外の照明が昼間から点灯し、同居人のスイス人も部屋の電気がつけっぱなしでも気にしていない風。もったいないじゃないか!と心の中で叫ぶ。何故だ?と心の奥で考える。でも裏を返せば、そんなこと気にしなくてもいい余裕が、スイスなのかもしれない。 Swiss will never get dark! I encountered situations where the light was on even in the daylight, or a room mate seemed to forget to switch off after using a bathroom. I simply wonder why? Is it because I lived in Berlin too […]

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Verboten!

国立歌劇場近く、プロイセン宮殿建築現場をぶらりとしていた時のこと。表通りに面した工事現場を囲う板塀で、この「張り紙禁止 (bekleben verboten)」の文字に出くわした。一瞬、グラフィティかとも思う、強烈な存在感。遠くの交差点まで続くこの板塀を目で追ってみると、張り紙などは見えず、まっさらだった。 日本人的な目で見ると、このスプレー文字そのものが禁止行為なんじゃないか?と感じるけれど、単刀直入なコミュニケーションをよしとするドイツ人的な目で見れば、「禁止すること」を伝えたいんだから、効果的だよね?となる。 I saw this sign: “No Sticker” when walking down Unter den Linden near the construction site of Berlin Palace. The warning sign was sprayed on a wall that fences around the Palace. A clean wooden wall. Nothing was written or put […]

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BERLINER-SWISS

チューリッヒに到着して初めて目に飛び込んできた車。ベルリンと対極に位置するような、この秩序ある豊かな街で、この「ベルリンぽい」車がどれだけ珍しいものか、その時は気づかなかった。 「ようこそスイスへ!」と言われているような、ほっと嬉しい気持ちになった。 This was the first car that I encountered in Zurich. I didn’t know then how special this car was in this super orderly and affluent city, which is the polar-opposite of Berlin. This car made me feel “home” and welcomed. photographed in aug/2020

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